訴訟前に、勝訴確率を算出するメリット
- K Wat
- 7月19日
- 読了時間: 4分
更新日:8月28日
訴訟前にご自身の裁判の勝訴確率(勝算)をある程度把握できることには、提訴する側にとって非常に大きなメリットが数多くあります。
一言で言えば、感情的・衝動的な判断を避け、合理的で戦略的な意思決定を下せるようになることが最大のメリットです。
具体的には、以下のような点が挙げられます。
1. 提訴そのものに関する合理的な判断ができる
訴訟を起こすかどうかの「Go/No-Go」判断を冷静に下せます。
勝訴の確率が高い場合:
自信を持って提訴に踏み切ることができます。
訴訟にかかる費用(弁護士費用、印紙代など)や時間、労力を投資する価値があると判断できます。
勝訴の確率が低い場合:
「負け戦」に多大なコストを投じるリスクを避けられます。
訴訟以外の解決策(後述の交渉や和解など)を真剣に検討するきっかけになります。
敗訴した場合、相手方の訴訟費用の一部を負担しなければならないリスクも回避できます。
2. 交渉(示談・和解)を有利に進めるための戦略が立てられる
日本の民事事件の多くは、判決まで行かずに和解で終わります。勝訴確率の把握は、この和解交渉において強力な武器となります。
勝算が高い場合:
強気な交渉ができます。「裁判になればこちらが勝つ可能性が高いので、この条件で和解に応じるのが得策ではないですか?」と相手に譲歩を迫りやすくなります。
より有利な条件(高い和解金など)を引き出せる可能性が高まります。
勝算が低い場合:
相手方から有利な和解案が提示された際に、それを受け入れる判断がしやすくなります。
「裁判で負けるよりはマシ」という現実的な落としどころを見つけ、損失を最小限に抑えることができます。
3. 費用対効果の検討ができる
訴訟には多大なコストがかかります。勝訴確率を踏まえることで、そのコストをかけてまで得るものがあるのかを判断できます。
例:請求額が100万円の裁判
勝訴確率80%の場合: 弁護士費用を50万円かけても、勝訴して100万円を回収できれば十分に元が取れると判断できます。
勝訴確率20%の場合: 50万円の費用をかけて、勝てるかどうかわからない100万円を追いかけるのは、リスクが高すぎると判断できます。
4. 証拠収集や主張の補強に役立つ
弁護士が勝訴確率を分析する過程では、「なぜ勝てるのか」「どこが弱いのか」を徹底的に検討します。
弱点の発見: 自社の主張の弱い部分や、不足している証拠が明確になります。
戦略的な準備: 判明した弱点を補強するための追加の証拠を探したり、相手の反論を予測してそれに対する再反論を準備したりと、訴訟に向けた戦略をより緻密に立てることができます。
5. 精神的な負担の軽減と見通しの確保
「勝てるかどうかわからない」という不確実な状態は、精神的に大きなストレスとなります。
心の準備: ある程度の見通しが立つことで、精神的な安定を得られます。最悪の事態も想定できるため、不必要に期待しすぎて、敗訴した際のショックが大きくなるという事態を避けられます。
時間的な見通し: 訴訟がどのくらいの期間を要するかの見通しも立てやすくなり、本業や日常生活への影響を計画的に管理できます。
どうやって勝訴確率を知るのか?
この「勝訴確率」は、もちろん100%正確に予測できるものではありません。最終的な判断は裁判官が下すためです。しかし、経験豊富な弁護士に相談することで、過去の判例、証拠の強さ、法律の解釈、相手方の主張の予測などを総合的に分析し、精度の高い「見通し(mitōshi)」を得ることが可能です。
弁護士は「勝率〇%です」と断言することは稀ですが、「勝訴の可能性はかなり高いです」「厳しい戦いになります」「この証拠があれば有利に進められます」といった形で、専門家としての見解を示してくれます。
まとめ
訴訟前に勝訴確率を把握することは、単なる「勝ち負けの予測」ではありません。それは、訴訟という手段を最大限有効に活用し、自らの時間、費用、そして精神的な平穏を守るための、極めて重要なリスクマネジメントと言えるでしょう。
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